INTERVIEW

インタビュー

農キャリアトレーナー
受講者インタビュー

5年間農スクールのプログラムに関わって

認定農キャリアトレーナー 山田 直明 さん

トレーナーを始める

元々農業とは関係の無い仕事、メーカーでのサラリーマンだったのですが、農スクール代表の小島さんが行っている体験農園に入会し野菜作りをしている中で農業にはまり、農業界に飛び込むことにしました。そこで農スクールの畑からも近い有機農家さんの元で研修を行うことにしました。

そちらで研修を行う傍ら、上級者コース(今で言う農キャリアトレーナー育成講座の農業部分)でも農業を学びました。そちらのコースが3月に終わり、4月から週に1度トレーナーとして農スクールに関わるようになりました。もちろんすぐにトレーナーを一人でできるものではないので、小島さん監督の下、学ばせてもらいながら一年目のトレーナーを務めました。

農作業が多様性を露わに

農スクールプログラムの受講生の方と接し、はじめ一番驚いたのは通われる方の多様さでした。引きこもり状態であった方や障害を持たれた方など、何かしら働きづらさを抱えている点は共通するのかもしれません。しかし、農作業の中で、淡々と作業をする方、リーダーシップをとってみんなをまとめてくれる方、底抜けに明るく周りを楽しませてくれる方、一人一人本当に性格の違いがあり、一緒に農作業をすることは色んなことを露わにするのだなと驚きました。野菜作りは、細かい作業、力のいる作業、一人でできる作業、何人かで行う作業、本当に様々な作業から成り立っています。それが鏡となって、プログラムに関わる人の性格や特性を映し出しているように思います。また人と話すのが苦手だなと思う人も少し離れて物理的に距離を取ることができ、無理が少なくプログラムに関われるのかなと思います。

トレーナーは、そういった農作業や畑の特徴が活きるよう、毎回のプログラムを組み立てるのだなと学びました。

プログラムに関わる大変さ

農作業は各々の特性を映し出す鏡のようだと言いましたが、それは内面にも及びます。農作業は一つ一つは単調な作業からできています。その単調な作業を黙々と行っていると頭の中でいろいろな考えが浮かびます。また、プログラムの最後にはその日のことを振り返る「ワークシート」を記入します。農作業をしながら色々なことを考え、ワークシートを書きながらその日のことを振り返る。プログラムの中で自分と向き合うことを半ば強制されるため、その分得るものはありますが、中々ハードなものだと思います。

さらに、それは受講生だけでなくトレーナーも同様です。私は2年間トレーナーを務め農作業を行い、自分と向き合う中で「これでいいのだろうか」「せっかく人生を変えに受講されているのに、それに応えられているだろうか」など悩みました。そういった悩みに耐えられなくなり、2年間終わったところで次の年のトレーナーは行えないと代表に申し出ました。

再度トレーナーを行う

トレーナーを降りた後は、プログラムの準備を手伝うなど周りでサポートする形で、外から農スクールのプログラムやそこに通われる受講生を見ることになりました。

1年間外から見ていると、トレーナーを行っているときにはその役目のプレッシャーから素直に受講生達のことを見ることが出来ていなかったんだなと反省しました。受講生達がプログラムを追うごとに変わっていく姿を見ていて、「すごいな」「自分も頑張らなきゃ」と思うようになりました。そうして再びトレーナーを務めさせてもらうことにしました。

それから3年になるのですが、相変わらず「これでいいのだろうか」と悩みながらプログラムを行っています。

プログラムには導入編と基礎編があり、それぞれ3ヶ月ほどの間に行います。導入編3ヶ月を過ぎたところで、そこで受講を終了する人も多く、その後も連絡をくださる方もいますが、それきりの人もいます。プログラムに通われたことはその人にとって何か良い経験となったのだろうかと今でも色々な方の顔を浮かべながら思い返すこともあります。

しかし、プログラムの中で変化している受講生を見て「負けじと頑張ろう」と刺激をもらいながらトレーナーを続けています。

今後トレーナーの役割を担う方へ

トレーナーを行う方は恐らく色々な悩みを持つと思います。そして難しいのは、「受講生を変える」と受講生に直接向き合うと上手くいかないという点です。このプログラムの肝は受講生とトレーナーが、被支援者と支援者の立場を取らないことにあります。トレーナーと受講生が向き合い、被支援者と支援者との関係性を作るのではなく、受講生が自分自身と向き合う場を畑や農作業を通じて作る、それがトレーナーの役割だと思います。もっとどうにか出来無いかと悩まれた際は、ぜひ畑や農作業に目を向けてみてください。