INTERVIEW
インタビュー
農キャリアトレーナーによる
プログラムの卒業生たちのリアルボイス
農スクールを経て、農業法人へ就職
小澤 修太 さん(雇用就農者)
不登校、長続きしないアルバイト、そしてひきこもりへ
中学2年の時に学校行かなくなりました。それ以来どんどん行きづらくなってしまい、そのまま卒業の時期がきてしまいました。高校には入りましたが、軽いいじめのようなものを受けてしまい、学校に行かなくなりました。高校は、1ヶ月もたずに辞めてしまいましたが、そのあとアルバイトをちょこちょこやっていました。最初はトラックに積んである本を仕分ける仕事からはじまり、町工場のような場所でネジの検査をする仕事、ビジネスホテルのベッドメイキングや年賀葉書の仕分け、食品のパック詰めなど色々な仕事をしましたがどれも長続きしませんでした。20歳くらいにはアルバイトも全てやめてしまい、だんだんと外にも行かなくなり、典型的な引きこもり状態になりました。ひどい時は家族と顔あわせることもなくなっていました。
兵庫県での自立支援が農業体験の入り口
引きこもり状態のままでいいわけないと思い、親に頼み込んで、「どうにかしてください。自分ちょっとどうにもならない」と相談をしました。そして、自立支援の場所を一緒に探してもらいました。それから半年間、兵庫県の自立支援のNPOに通いました。そこでは、トマト、ナス、ピーマン、大根、ニンジンなどをレストランに卸していて、変わった品種を育てていました。半年の自立支援体験が終わったあと、兵庫で働かせてもらう予定でしたが、その前に少し実家に戻ったら、また腰が重くなってしまい、兵庫へ行かなくてもいいかもしれないと思うようになってしまいました。そのまま実家に戻っても働かず、段々と前の引きこもり状態に戻り、外にも出なくなりました。
このままじゃダメだと思い農スクールに参加
そんな日々を過ごす中、また、これじゃダメだと思い、農スクールをインターネットで調べ、メールで連絡し、説明会に参加しました。実際に、農スクールに通いはじめると、小島さん(農スクール代表)はじめ、スタッフの方々が優しくて、導入編の後の基礎編にも進むことを決めました。自分にとっては、週1回じゃ物足りなかったので、静岡の若者サポートステーションという場所にも行きだしました。関わり方としては、農家を手伝うような形でした。自分は農スクールの前に兵庫県での自立支援を通して農業に関わったことで、農業をいいなと思っていたので、もっと農業がやりたいなと思いましたが、全くやってない人からしたら週1というのがいいペースなのではないかと思います。引きこもっている人だって、好きで引きこもっている人はいないと思うんです。ただ、一歩が踏み出せないというか。だから簡単にというか、軽く始めさせてもらえるところがあるといいのではないかと思います。農スクールは週1で、3ヶ月でプログラムを区切っているのが、いいなと思いました。
農スクールで気持ちが前向きになり主体的に行動できるようになっていった
農スクールに通ってみて、気持ちが明るく、軽くなりました。友人もできましたし。ずっと悶々と、あれしなきゃこれしなきゃと思っていましたが、農スクールが1つのきっかけで、やらなきゃいけないことが見えた気がします。いい人たちに触れられて、接することができたので、自分自身のトゲトゲしさも減ったかなとも思いますし、積極的にもなったかなと思います。実際、農スクール以外の人たちからも、積極的になっていると言われるようになりました。
農業は自分独自のスタイルを出せる仕事
自分の経験したアルバイトの中でも、食品のパック詰めの仕事があったんです。それが機械的で苦手だなと感じたことがあります。一方で、農作業だったら、機械などを使ったりする中でも個人によって差が出たり、その人その人の流派というか、やり方があると思いました。そういうのはすごく楽しいなって。また、やはり外に出て、自然に触れるのがいいと思います。農業は土と戯れる、そういうのがいいのではないかなとも思います。ずっと部屋の中にいるより、そういうことをしている方が、人間本来の姿なのではないかなと思います。
熊本での農業インターンで有機野菜を育てたいと決意
農スクールが終わってから、小島さんの紹介で、熊本の柑橘の有機農家さん※へ2週間泊まり込みでインターンに行きました。(※鶴田有機農園:インターンの受け入れ先農家さん。有機農業者集団である株式会社マルタの元会長鶴田氏のご実家。)今までに一度、静岡でボランティアとしてみかんを育てたことがありました。その経験から、「正直ちょっとみかんはやりたくないな」と思っていました。でも、一緒に行く農スクールの同期の方がいたので、一人だったら行かない所を、行ってみることにしたんです。でも、実際に行ってみたらすごく、価値観が変わったというか。食べるものがみんな美味しくて。実を言うと私は、野菜を食べることがそんなに好きじゃなかったんです。ですが、そこでは野菜が美味しくて、全然違うなあと思いました。鶴田有機農園では、全国の色んな農家さんから有機野菜が運ばれてくるんですね。以前は、何でも野菜を作れたらいいなという感じだったんですが、有機野菜を食べてみると味が全然違うぞってなって。自分自身もこういう美味しいものを作りたいなと思うようになりました。そしてその時に、失礼な言い方かもしれませんが、「みかんじゃなくて野菜をやりたいんです」、と(元)会長に伝えたんです。すると、今現在の就職先である株式会社プレマさんを紹介してくださり、東京で面接をしていただき、働かせていただけ
ることになりました。(株式会社プレマ www.premafoods.com )
実際に働いてみて自分に成長する機会が与えられているありがたさを感じた
トラクターの運転をはじめとし、全部慣れないことばかりなので大変です。最初は、他の人が収穫したものをコンテナに入れて運んだり、草だしの作業をしたりの繰り返しでした。最近になって被覆などの作業やトラクターの運転をだんだんとやらせてもらえるようになりました。また、研修期間終了後は正社員になり、作業が終わった後の記録をする「入力」の作業で帰りが遅くなります。19時まで入力の作業を行い、その後帰宅、夕食の準備を行うので、結構大変だなと感じています。大変ではありますが、やらせてもらっているというか、機会を与えてもらっているというか、そんな印象を持っています。学校に行っていれば、おそらくその中で自分がこれだけできるみたいなのを学ぶんだと思いますが、自分は学校に行っていなかった分その機会がなかったので、今職場でそのような機会を与えてもらっているのがとてもありがたいと感じていますし、すごく頑張れます。今では自分はどこまで成長できるだろうと考えられるようになりました。